クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「あの、由岐先生……」
「せっかくだしいいだろ、記念にな」
彼の笑みに小さく頷くと、私たちは三人でカメラのほうを見た。
日曜日の園内は沢山の家族連れでにぎわっている。
私たち三人もこのなかのひと組に見えているということかな。
夫婦に、親子に見えている。だとしたら、嬉しいな。
「はい、OKです。こちらお写真どうぞ!」
「ありがとうございます」
ポラロイドカメラから印刷された写真を見ると、この動物園オリジナルのフレームに笑顔の私たち三人が写っている。
この景色のなかには、互いの立場の違いも周囲の目も評価も関係ない。
それはどう見ても幸せな三人家族で、宝物にしようと思えた一枚だった。
それから私たちは三人で園内をぐるりと回った。
そして気付けば時刻は12時過ぎのお昼どきとなっていた。
「そろそろ昼食にするか」
「はい。私お弁当作ってきたので、向こうの広場で食べましょうか」
一面が芝生で覆われた広場の一角で、レジャーシートを敷きお弁当を広げる。
目の前に並んだ、おかずとおにぎりを由岐先生はまじまじと見た。
「どうかしましたか?あ、苦手なおかずとかありました?」
「いや、そうじゃない。人の手料理は久しぶりだと思ってな」
少し嬉しそうに言って、彼は「いただきます」と玉子焼きをひとつ食べる。