クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「ん、うまい。甘めなんだな」
「はい。実家が玉子焼きは甘め派で」
なにげない会話のなかこぼされた由岐先生のひと言が嬉しい。
すっかり由岐先生になついている頼は、彼の膝の上で頼用の小さなおにぎりを頬張っている。
朝からはしゃいで興奮していっぱいご飯食べて……幸せそうな頼に胸がいっぱいだ。
「由岐先生、今日は連れて来てくれてありがとうございました。頼が楽しそうでよかった」
「あぁ。ここまでよろこんでもらえると連れてきた甲斐があるな」
口の周りにご飯粒をつける頼を見て、お互い自然と笑みがこぼれた。
快晴の空の下、この時期にしては暖かな気温とそよぐ風。
そんな穏やかな天気の中、気付けば頼はご飯を食べながら寝てしまっている。
「寝ちゃったな」
「朝からあれだけはしゃいでたから、電池切れって感じですかね」
手にしていた食べかけのおにぎりを取り、自分の上着を頼にかけてあげようと脱ごうとした。
すると由岐先生はそれを止め、自分の上着を脱ぎ頼にかけてくれた。
こういう些細なことひとつひとつが、また彼の優しさを教えてくれる。
昼食を食べ終え、私たちは眠る頼を見守りながら風にあたっていた。
ふたり並んで座っていると由岐先生は自然と私の手に自分の手を重ね、この手にそっと触れる。
なんて、幸せな時間なんだろう。
『つりあわない』『もったいない』、そんな周囲の言葉も気にせずいられる。
こんな時間がずっと続けばいいのに、と願ってしまう。