クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~



「荻野、この書類について確認いいか?」

「あっ、はい」



仕事中だからか、いつもと違う呼び名で呼ぶ彼に、私は慌てて席を立つ。

そして一緒にすぐ近くの応接室へ入ると、書類を挟んで内容についての話をした。



「……そうか、わかった。この件は外科にも伝えておく」



そう言う由岐先生は手で目元を揉み、疲れている様子だ。



「由岐先生、疲れてます?」

「あぁ、朝から手術が二件あってな。神経使う内容だったから、さすがに疲れた」



朝から……。その話に先ほどのニュースの件を思い出した。



「あの、由岐先生もしかしていつも無理してます?由岐先生ほどのお医者さんが毎日のように夕方に上がるって大変なんじゃ……」

「無理はしてない。できる仕事は持ち帰ってるし、日によっては当直も入ってる」

「けど……」



彼の休む時間を奪ってしまっているのでは、と申し訳ない気持ちを隠し切れない私に、由岐先生はふと思いついたように言う。



「ならちょうど頼みたいことがあったんだ。気がかりならそれでチャラでどうだ?」

「頼みたいこと?」

「あぁ。今週の日曜空いてるか?大丈夫ならその日で」

「え?大丈夫ですけど……」



それ以上内容を詳しく言うことはなく、由岐先生は『時間はまたあとで』とだけ言って部屋を出る。



由岐先生が私に頼みたいことって……なに?

わからないけれど、彼が私になにか頼むなんてなかなかないことだと思うし。できる限りのことは引き受けよう。

そう納得して、私は当日を迎えることにした。


  
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