クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
私と由岐先生の噂が、まさかそこまで届いていたなんて。
由岐先生の親……つまりはうちの病院の院長夫婦ががいきなり小児科へ来るのは心臓に悪いかも。
でも急にあいさつだなんて。
職場で息子とそんな噂になるような女クビ!とか、息子とつりあわない女クビ!とか言われたらどうすれば……!
頼とふたり路頭に迷う将来を想像してゾッとしてしまう。
「そもそもただの噂、ってことで流してもらって私を紹介することないのでは……」
「俺としてはいずれ結婚するつもりだし、いい機会かと」
「は!?私はそんなこと言ってない……!」
赤信号に車を停めると、由岐先生はこちらへ顔を近付ける。
「何度もキスした仲なのに、か?」
意地悪い言い方をする彼に、先日のキスを思い出し顔がかああと熱くなる。
「したんじゃなくて、されたんです!」
「あぁ、確かにそうか」
はは、と笑いながら由岐先生は視線を前に戻した。
からかわれてる……!
けどこうなっては仕方がない、彼女として装うしかないかと私は観念する。
「……せめて手土産買いたいので、どこかお店寄ってもらってもいいですか」
「別に気遣わなくていいけど」
「ダメです!私がクビにされたらどうするんですか!」
「クビ……?」
そして途中で手土産を買い、戸惑いも収まらぬうちにやってきたのは青山にある住宅街。
いくつもの家が並ぶ高級住宅地の中、ひと際目立つ一軒の家がある。
白い外壁が眩しい三階建てのその家のガレージに車を停めた。