クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
それにしても本当に知らない人ばっかり。
さすが有名病院だ、医師も看護師もその関係者まで含めるとたくさんいる。
……このなかに、『ユキ先生』がいたりしないかな。
なんて、夢みたいなことを思ってしまう。
いや、そもそも彼がまだこの病院にいるのかも、いたとして独身なのかすらもわからないけれど。
出会えたらきっと、運命だって思えちゃうのに。
「ねぇ、きみ」
突然声をかけられ、私は顔を上げた。
するとそこには明るいグレーのスーツを着た若い男性がひとり立っている。
「どうしたの、ひとり参加?」
「いえ、友人と来たんですけど別行動になっちゃって」
「そうなんだ。かわいいね、看護師さん?見たことないけど何科?」
「えっと……」
軽い感じであれこれとたずねられ戸惑ってしまう私に、彼もそれを察したように笑う。
「あ、ごめんね。いきなりグイグイいきすぎたよね」
「いえ、すみません。こういう場所あんまり慣れてなくて」
「そうなんだ。よかったら向こうでゆっくり飲もうよ」
男性はそう言いながら、室内の奥にあるソファ席へ私をうながした。
頃合いを見て帰ろうと思ったのに……。でもまぁ、少し話すくらいならいいかな。
もしかしたら、ユキ先生に関してなにかわかるかもしれないし。
そう思い、私は黒い革張りのソファへ腰を下ろす。