クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
「……もしかして、ここですか?」
「そう、ここ」
車を降り正面から見た家はいっそう大きく、いくつもの窓が並ぶその家を唖然と見上げた。
都内の一等地にこんな立派な家……さすが院長の家。
すっかり腰が引けてしまった私を気に留めることなく、由岐先生は『由岐』と書かれた表札の横の門を通り敷地内へ入った。
綺麗な芝生の庭を横目に通り過ぎ、重厚感のある玄関のドアを開けた。
その先に広がる玄関は綺麗に片付いており、玄関だけで私の家のひと部屋くらいある。
するとパタパタとスリッパの音とともにやってきたのは、茶色い髪をふわふわと揺らした中年女性だ。
「徹也、おかえりなさい」
「ただいま。父さんは?」
「もちろんいるわよ。それにたまたまだけど、今日は智成もいるの」
どうぞ、と促されて靴を脱ぎ家にあがる。
そして通されたのはこれまた広々としたリビングだ。カーテンが開けられた大きな窓からは、タイル造りのテラスと綺麗なガーデニングが見える。
茶色いトイプードルが二匹、「ワン!」と出迎えるその部屋で、L字型のソファに座る男性がいた。
「徹也。久しぶりだな」
それは白髪交じりの髪をラフにセットした男性。
目力のある端正な顔立ちは由岐先生によく似ていて、紛れもない血のつながりを感じさせた。