クールな外科医はママと息子を溺愛したくてたまらない~秘密の出産だったはずですが~
それからは、由岐先生たちが淹れてくれたお茶を飲みながら、少しの時間を過ごした。
そして頃合いを見て帰ろうとしたとき、由岐先生のお母さんは「今度は息子くんも連れて来てね」と言ってくれて、私がシングルマザーと知りながらも深く触れずにいてくれたのだと知った。
由岐先生のお父さんもお母さんも本当に優しくてあたたかくて……胸が、痛い。
「ふぅ~……気が抜けた」
由岐先生の実家を出てから、まだ頼のお迎えまで時間があるということで、私たちは一度由岐先生の家へやってきた。
緊張感から解放され一気に脱力してしまい、ソファの背もたれにだらしなく寄りかかる私に、由岐先生はキッチンでコーヒーを淹れてきてくれた。
「悪かったな、いろいろと疲れただろ」
「いえ、ご両親もいい方で安心しました」
「いや、親じゃなくて兄貴の方」
由岐先生はコーヒーカップをふたつ、目の前のローテーブルに置くと私の隣に腰を下ろす。
「兄貴は昔からあんな感じでな。俺は慣れてるから今更なんとも思わないけど、まさか美浜が反論するとは思わなかったな」
「すみません、生意気に……」
「謝ることないだろ。むしろ俺は嬉しかった、ありがとな」
小さく笑って私の頭を優しく撫でてくれる。その手つきから、彼の言葉が嘘には聞こえなかった。