犯罪シンドローム

11

 

「加藤くん、今日は私と遊ぼうよ」
 いつもと変わらない日常。女には不自由してない。好きでもない女でも身体は嫌いじゃないし、抱こうと想えば誰とでもできる。だけど、最近はいい加減、面倒になってきた。女同士の争いに巻き込まれるのも。
 ちっ…めんどくせぇ…。
 俺に寄ってくる女はいちいち頭にくる。
「うぜぇ、帰れ」
 つい本音が出た。傷つけた顔をして腕に絡みついていた女が離れていく。
 余計なひと言だったかもしれないが…それでいいんだ、一生顔見せんな。
 別に女なんてなくても生きていけるんだ。
 俺から求めた記憶なんて一度もない。なのに、いつの間にか寄ってくる女たち。初めに一夜限りの付き合いをした日から誘えば誰とでも寝てくれるなんて噂が一気に女の間で広まったらしい(これも女から聞いた話)。うんざりする。

 とある大学のとある一室。クーラーの効いた部屋が俺を癒す。扉は女が乱暴に閉めて反動で少し開いてしまっていた。その少しの隙間が廊下をちらつかせていた。廊下を走る足音が聞こえ、苛立たしげに隙間から外を軽く見やる。
 そこを一人の女が走り去って行った。
 あいつは…。何であの女が…。俺はあの女を知っていた。どこで知ったのかは今となってはわからない。
「へぇー…。ここの大学だったのか、間宮里未」
 ニヤリ…
 無意識に口角が上がる。少しは面白くなりそうだ。なんの好奇心か、俺はその教室から出、あいつを追うため走っていた。だが案外、あいつの足は遅いものだった。見失っては困るので、本気で走って追いかけたが、すぐにあいつを見つけることができ、焦った。
 ここから俺の尾行は始まった。

 間宮は走って、車の多い大通りにまで出た。
 …どこ行くんだ、あの女…。
 ケータイを取り出して、どこかへかけているようだ。少しして、女の前に青い車が止まり、女を乗せて走り出した。
「くそっ…あいつ、車かよっ」
 しかもよく見えなかったけど、運転席にいたのは見たことない男だった。あいつの男か?イライラしてくる。
 俺はとっさにきたタクシーをつかまえ、青い車を追わせた。まさか、尾行されてるとは思わないだろ。
 人通りが無くなれば尾行は自殺行為だけどな…。

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