犯罪シンドローム
3
少し沈んだ太陽の光はまだ眩しくて目が覚める。
「ん…あれ…私、いつの間に寝てたんだろう…」
体を起こし、自分の家ではないことに少し驚く。卓人が用意してくれた自分の部屋。
「そっか…私、あの人といることを選んだんだっけ…」
そばに置かれた時計に目をとめる。
3:10…もうそんな時間か…。
よく見ればこの家、ちゃんとした生活感のある家のようだ。最低限の家具以外の物がある点、若さを感じる。
「卓人くん?いるの?」
物音一つしない。外の音すら聞こえない…。
静かすぎると思った。空調設備はどこも作動していなかったが、寒く感じ肩をさする。
リビングまで歩いて卓人がいないことを確認する。
私が起きた時、卓人が着ていたパーカーが掛けられていた。私にパーカーを掛けてどこかへ出かけたようだ。
薄情な人。私、まだここ来たばかりで不安なのよ、これでもちゃんと女の子なのよ。
「何で?私を置いてどこ行くっていうのよ…」
「──何か言った?」
「ヒェッ!?た、卓人くん…!?」
「ごめん、また驚かせたね。どうしたの、もしかして…寂しかった?」
誰もいないと思ってたのに。驚きを他所に当の本人、卓人はニヤニヤしていた。
楽しそうに聞かれて面白がってるのが分かる。本当にそうだって答えたらどうだっていうの?優しい言葉の1つでもかけてくれるの?
本当、どうしてそんな気持ちになるのだろう。
私はついさっきまで彼が犯罪者であることを忘れてしまっていた。
「……私、まだ26歳なの」
「え?うん」
「度胸があってもこれでも女の子なの。来たばかりの家で1人って落ち着かないし、こんな場所だし余計に…」
「うん。寂しかったんだね?」
「…そうだって言ってるでしょ…」
何?試されてる?顔が熱くなる。
「そっかそっか(笑)ごめんね?今夜は置き去りにしたりしないよ」
…今夜?
「ねぇ…夜、どこか出かけるつもり?」
「そうだよ。…どうかしたの?僕にとって夜は最高の活動時間だしね。もちろん、ついてくるよね?」
…え?…何かする気なの…?
「…っ行く!」
説明をされてないけど、何かもし悪いことならわざわざ私を連れて行くはずがないと踏んで…。