さくらいろさく【短編】
「これは優奈が生まれた時… これは初めて立った時…
あ、これは七五三。」
優奈ちゃんのお母さんが、ページをめくりながら説明してくれる。
綺麗に整理して、可愛いコメント付でファイルしてある。
アルバムの中には笑顔がいっぱいで、優奈ちゃんとおかーさんとおとーさん…
あれ、よく考えたら優奈ちゃんのお父さんにあった事ないな…。
そう思いながら、めくられるページを目で追う。
もう1人よく優奈ちゃんと写ってる子がいる。
…この子は知ってる。
章人くんって言ったっけ?
前に広場で一度会った事がある。
気になって、思い切って優奈ちゃんと2人笑顔で写っている お父さんらしき人を指差して聞いてみる。
「この人は、優奈ちゃんのお父さん?」
「…うん。」
それまで はしゃいでいた優奈ちゃんが静かに答える。
ぱたんとアルバムを閉じて
「もう寝よっか?」
と言う優奈ちゃんが淋しそうな笑顔だったので、私はそれ以上聞けなくなってしまったんだ。