~狂恋~夫は妻を囲う
「おはよ!魁聖くん、アニキ」
「おはよ…魁、洋」
魁聖の幼なじみの双子・左依と右京。
今は洋武の部下だ。

魁聖の父親・聖一郎は朝陽会の組長で、魁聖の姉・聖子の旦那の洋武が若頭だ。
魁聖は洋武の管轄する会社で、社長として働いている。
23歳だが、魁聖は元々から器用で賢い人間の為、淡々とこなしている。

「社長、おはようございます」
魁聖の秘書・式部がドアを開ける。
「じゃね、洋武、左右」
後部座席に乗り込み、もたれかかった魁聖。
「社長、煙草です」
「ん」
式部から受けとると、吸い始めた。
「本数、少なくなりましたね」
「そう?あー、家であんま吸わないからな」
「彩羽さんに止められてるんですか?」
「控えてって言われてる」
「心配してくれてるんですね」
「やっぱり?だよなぁ~!ほんと、いい女!
俺のいろちゃん!」

彩羽の事になると、途端に雰囲気や表情が柔らかくなる魁聖。

魁聖はとても冷酷な人間で、周りからは“死神”と呼ばれている。
朝陽会の若頭も、魁聖がならなくてよかったとの声もあるくらいだ。
全く、情を持っていないのだ。
だから誰もが、今の魁聖に驚愕している。
彩羽に対してだけは、異常な愛情をもち、とても穏やかになるからだ。
そんな魁聖を聖一郎や聖子でさえも、見たことがなかったのだ。

「魁、最近優しくなった……」
ボソッと右京が言った。
「そうだなぁ。彩羽ちゃんのお陰だな!」
左依も賛同する。
「でも、彩羽は可哀想だ……」
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