~狂恋~夫は妻を囲う
「まぁな」
「………紹介、しなきゃよかったわね…今更だけど」
「いや、俺がたかをくくってたんだ。
魁聖があんなに彩羽を気にいるなんて思わなかった。
それに朝陽会の組長の座も欲しかったしな!
要は、俺が欲張りだったんだ」
「まぁね……一番彩羽に可哀想なことをしたわね……」

洋武と聖子は夫婦だが、愛し合って夫婦になったのではない。
洋武は、朝陽会の組長になりたかったから。
朝陽会と言えば最大の組織で、組長となれば裏の世界の王のようなものだ。
聖子は、所帯を持てば一番大きなクラブのママにしてやると聖一郎に言われたから。
二人の利害が一致したから、二人は結婚したのだ。

「そうだな。俺は、好きな女も守れない」
「私も何もしてあげられない」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その頃の彩羽。
「掃除でもするか!」
彩羽は一人で外に出られない。

彩羽は度重なる不幸で、人間不信に陥っている。
それもあり、一人で出かけようとも思わないが。

掃除をしていると、インターフォンが鳴った。
「ん?誰だろ?宅急便?なんか頼んでたかなぁ」
画像を確認すると、見知らぬ男がいた。
「え……誰…?どうしよう……」
深呼吸をして、通話ボタンを押した。

「は、はい…」
「こんにちは!
僕、隣に引っ越してきた真山って言います。ご挨拶に伺ったんですが……」
「え?堅一くん?」
玄関に向かい、ゆっくり開けた。
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