タイトル未定の恋心
ああ、もう、バカみたい。
散歩は中止。回れ右をして、走って帰った。ベッドに潜り込んで、身体を丸めて、ないた。
次から次へと、感情が溢れて、混ざって、また溢れて、混ざる。こんな感情、知らなければよかった。知りたくなんて、なかった。
けれど、ワタシの慟哭は、きっとカレには届かない。あと少ししたら、呑気な声で「ただいま」を言って、玄関まで出迎えないワタシを探し始めるのだろう。「ねぇ、どこにいるの?」なんて、困ったように、少しだけ焦ったように言うのだろう。
「たっだいま~」
なんてことを考えていたら、鼓膜に届いた呑気なそれに、耳がぴくりと動く。
ほらね、カレが帰ってきた。
勝ち目なんてないと分かっているけれど、ほんの少しの対抗心をカレが夢中で必死になっているあのコに向ける。
「あれ? 今日はお出迎えなし~? ねぇ~?」
おそらく、だけど。
あのコがいなければ、変わらずカレはワタシを見て、そして、求めてくれる。
だけど、そんなのじゃ、きっとワタシは満たされない。
「ねぇ、どこにいるの?」
ねぇ、キミが言ったんだよ。
それでもいいから、ずっと一緒にいて欲しい、って。