タイトル未定の恋心

 まぁ、でも、きっと、キミは覚えていないんだろうね。
 どうせ、そのうち見つかるだろうから、ベッドの中で丸まったまま、そっとまぶたを伏せた。

「あ。こんなとこにいたんだ」

 瞬間、ぺらりとめくられたお気に入りの毛布。何度も何度も洗濯したからちょっぴりごわごわするけれど、それでも、キミからの初めてのプレゼントだから、ワタシはこれを手放せないでいる。

「ただいま」

 柔らかいその声が、ワタシは好きだ。
 ワタシがどんなに素っ気なくしても、わざと冷たい態度をとっても、いつだってキミの声は柔らかい。他とは違うワタシだけに向けられる特別。それがずっと続くと信じて疑わなかった思考は、結局ただの(おご)りだったのだと、ついさっき、気付かされたのだけれど。

「眠いの? まだ、寝る?」

 するり、カレの指がワタシの頬を撫でた。

「っと、ごめん、驚いたよね。携帯鳴っ……っま、じ、か……!」

 瞬間、ぴこん、と空気を伝い響いたその音。
 離れていく、カレの体温。ごぞりと、ポケットから何かを取り出したカレはそれに視線を向けて、そして、完全にワタシから意識を外した。
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