タイトル未定の恋心
ぴこん。
ぴこん。
ぴこん。
止む気配のない音にぴくぴくと耳が動く。
完全にワタシの存在は忘れられている。そう言っても過言ではないほどに、カレの視線はずっと、カレの手の中にあるものへと向けられている。
ぴこん。
ぴこん。
ぴこん。
カレはまだ、それを見てる。
一緒に暮らし始めた頃も、確かにそれを持ってはいたけれど、ワタシがそばにいるときは触ったりしなかった。いつだって、ワタシを見てくれていた。
ぴこん。
ぴこん。
ぴこん。
けれど、もう、カレはワタシを見てはくれない。
きっと、音を奏でているのは、カレが夢中で必死なあのコなのだろう。
ねぇ、やめてよ。
例えば声を荒げてそう訴えたとしても、カレには微塵も伝わらない。
分かってる。そんなこと。
知ってるんだ。そんなこと。
それでも、気付いて欲しくて、ワタシはそっと、喉を震わせた。