猫かぶりな僕ら
「それにしても……優等生がこんなところで仮面を外してるなんて、驚きだなぁ」

 何を言う、白々しい。
 そう言いたい気持ちをグッと堪え、笑顔が剝がれないように意識を集中させる。
 彼がここに来たのは偶然か、それともどこからか後をつけられていたのか。どちらにせよ、めんどくさい事この上ない。

「……教室でゲームをするのは、ちょっと気が引けたので」
「噓吐け。”先生受けを気にして”だろ? もうさ、良い子ちゃんぶるの止めて素に戻ったら? あと雪ノ下さん、俺の事嫌いでしょ」

 分かっているなら何故絡む。
 またも言葉を飲み込んで小さく息を吐くと、小町先輩は楽しそうに笑った。

「俺はさ、雪ノ下さんと違って同族が大好きなの。だって優等生でいるのって疲れんじゃん? そのせいか同じような人間といると気が休まるというか」
「そんな……気のせいですよ……」
「いーや、絶対同族だね。いい加減認めろよ、もう本性はバレたんだし」
「――……」

 どうやら私は、とても厄介な人物に目をつけられてしまったらしい。
 これ以上逃げようとしても無駄に疲れるだけだと悟ったので、一旦諦めてこの状況を受け入れる事にした。

< 6 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop