白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

「盗品は戻ったけど、盗んだ事実は消えないぞ。それと、王家を愚弄した罪は重い……極刑に処すことだってありうるんだぞ? なに笑ってるんだよ。だからバカだって……」
「ジェイニー・ジェミナイ」
「なんだよローザ」
「……忘れたんじゃなかったの?」
「忘れてるさ。けど、ここは場所が悪すぎる。精霊たちが囁くんだよ。(すべから)く彼女を解放すべし、なんて偉そうに。ボクが王にかけあったところでそう簡単に檻の外に出せるわけないのに……」
「その気持ちだけで充分よ」

 ふふ、と花がほころぶように笑うかつての幼馴染みを睨み付けて、ジェイニーはぶるぶると頭を振る。

「ああ気持ち悪い! なんて中途半端な“やりなおしの魔法”をかけたんだ。真相を知るのは国王と君だけで、あとの人間はなに食わぬ顔で、国を騒がせた女怪盗アプリコット・ムーンが捕まったって話題でお祭り騒ぎだ……いっそのこと脱獄でもさせてやろうか?」
< 102 / 315 >

この作品をシェア

pagetop