白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
ローザベルには成し遂げなければならない目的がある。怪盗アプリコット・ムーンになって“稀なる石”を集めているのはその第一段階にすぎない。
そのためにも、まだ子どもをつくるわけにはいかない。
「愛しいローザ。何があっても起こっても、俺を見捨てないでおくれ」
――それはこちらの台詞です。ウィルバーさま。
愛を深め合った余韻に浸る夫の栗色の髪を撫でながら、ローザベルは気だるそうにこくりと頷くにとどめるのであった。