白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
「ずいぶん気持ち良さそうだな……この女怪盗っ」
「はぅんっ!」
悲鳴をあげるローザベルを獰猛な空色の瞳が見つめている。責められているのに、こんなにも感じてしまう自分がいることにローザベルは戸惑いを隠せない。
「拷問台でこうされるのが好きなのか? 痛いのは嫌だと泣いていたくせに……!」
「違うっ……」
大好きなウィルバーがしているから、ローザベルの身体はこんな異常な状態でも悦んでしまうのだ。
けれどローザベルの記憶がないウィルバーからしたら、彼女の反応は単なる淫乱な、男好きの身体にしか見えないのかもしれない。
もどかしそうに身体をひくつかせるローザベルにふれていたウィルバーだったが、ふと真顔に戻り、潤んだ瞳の女怪盗を問い詰める。
「……ここから先は、俺の質問に応えてからだ」
「!」
身体はこの先の快楽を欲しているというのに、彼は甘い拷問をここで取り止めようとしている。ローザベルが何も話さないから。
「快楽アプリコット・ムーン……お前の背後には誰がいるんだ?」
「誰も……いないわ」