白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 ウィルバーの手と口によって昂っていた身体は、行き処のない熱を保たれた状態に悶々としている。だけど今日はこれで終わりなのだ。こんな、中途半端な状態で……
 拷問という名の甘い責め苦は、明日もつづくのだろう。ローザベルは観念して、素直に従う。

 ウィルバーに抱き上げられ、監禁部屋となっている檻のなかへ戻ると、そこにはさきほどまでなかった寝台と、薄手のガウンが準備されていた。

「ここで寝てくれ。城にあった寝台が余っていたから部下に持ってきてもらった。ガウンは切り裂いてしまった黒い服の代わり……とでも思え」

 差し出された淡いピンクのガウンは繊細なレース編みの、高価なもの。おそるおそる受け取ったローザベルは、両手で拡げて、愕然とする。

 ――あの、ウィルバーさま。このガウン、過去視を行ったときにひいおばあさまが初夜の儀式に着ていたものと同じデザインですよね!?

 アイーダが結婚式の際に着ていた深紅のガウンと比べれば可愛らしいが、それでも露出は高く、羽織っていても恥ずかしい場所は透けて見えてしまう。こんなものを、ウィルバーは着ていろと言うのか?

「……これを、着るの?」
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