白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
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噎せ返りそうな甘い薔薇の香りが漂う真っ白な浴室内で、ローザベルはウィルバーに身体を洗われることになった。
まる一日お風呂に入っていなかったうえに、拷問の際に失禁をしてしまったローザベルは寝室につれてこられてすぐさま「風呂に入れ」と命じられてガウンを脱いだ。抵抗する気力がないと判断されたからか、魔法封じの手枷も外されている。
てっきりひとりで身体を流してくるものだと思っていたのだが、あろうことかウィルバーまでも憲兵服を脱いだすっぽんぽんの姿で浴室に入ってくる。驚くローザベルを見て、ウィルバーはイタズラが露見した子どものようにほくそ笑み、彼女の身体を抱き上げた。
「ウィルバー……!?」
「ふふ。嬉しいね、俺の名前を呼んでくれるなんて」
「そ、そうじゃなくて……なんでハダカ」
「君を洗うためさ」
さっきまでずっと「お前」だったのに、監獄を出てからは「君」と呼ばれている。かつての夫に戻ったかのような錯覚に陥り、ローザベルは混乱する。
――で、でもウィルバーさまと一緒にお風呂なんて一度も入ったことなかったのに……