白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
邸で暮らしていたときは住み込みのメイドがいて、彼女が入浴の手伝いをしてくれていた。ウィルバーも仕事で忙しく家の風呂を使うことなどほとんどなく、憲兵団の詰所にある水浴び場で身体を清めることが常だった。
花の離宮に移ってからも彼が風呂を使う姿など見たことがなかった。ローザベルも片手で数える程しかここの風呂を使っていない。そういえばふたりのためにと王が使用人を通わせてくれていたが、彼らはいまもウィルバーに仕えているのだろうか。
「ひゃっ、なに……?」
思案にふけるローザベルの意識を戻したのは、ウィルバーの指先だった。
ローザベルを自分の膝の上に座らせていたウィルバーは、薔薇の香りのする石鹸をたっぷり泡立てながら、彼女の髪や首筋にキスの雨を降らせていた……そこまではこそばゆい気持ちになりながらも素直に受け入れていたのだ。
だが、石鹸の準備を終えたいまのウィルバーは、両手をクロスさせて彼女の乳房を掴み、ふにふにと揉みしだいている。石鹸のぬめりのせいか、ふだんよりも艶かしい接触に、ローザベルの肌がゾクりと粟立つ。