白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
率直に望んだところ、王は苦い顔をしていたが、花の離宮での事情聴取はすきにしていいと認めてくれた。だからウィルバーは彼女を自白させるためといいわけしながら、彼女を自分のモノにするための画策をはじめたのだ。
城を出て街で見かけたラーウスの婚礼衣装も、ウィルバーの心を動かした。愛玩奴隷とは言ったものの、古代魔術を扱う彼女ならば、このガウンが何を意味するか理解するはずだ。
とはいえ、彼女に着せたら似合うだろうなと思ったから、買ってしまったというのが本音だ。王城に咲いている薔薇、エアシャー・スプレンデンスに似た、淡いピンク色のレース編みのガウン。現に素肌に羽織るだけの結婚装束を着て眠っていた彼女は、妖精のように美しかった。
「んっ……」
「怪盗アプリコット・ムーン……杏色の月、か」
気を失ったままの彼女を横抱きにして、ざぶりと湯船から上がったウィルバーは、濡れた身体をふかふかのバスタオルに包み、そうっと寝台へ運ぶ。髪や身体についた水分を拭き取ったらあのガウンを着せて休ませてやろう。
ウィルバーは先程まで着ていた憲兵服を取りだし、何事もなかったかのように着替え始める。