白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 それに、ウィルバーが憲兵団長の権限を利用して怪盗アプリコット・ムーンを花の離宮に留めて取り調べを行っているこの状況をアイカラスは面白がっているが、フェリックスが玉座に座ったら、即座に王城へ引きずって来いと召喚され、あげく国家を愚弄した反逆罪で彼女をひといきに殺してしまいかねない。

「……そんなに怪盗アプリコット・ムーンが気に入ったのかね」
「!」

 考えていることが顔に出てしまったのだろう、アイカラスに指摘されてウィルバーは素直に頷く。

「――彼女の処遇は、どうなるのでしょう」
「それはウィル、お前が取り調べをしっかり終えるまでわからない。王家が憲兵団長の報告を受けてから、議会にかける……わしが国王でいる間に彼女が自白できれば、すぐに処刑することはないさ」

 それはつまり、国王の首が変わるまでに彼女の真意を問わなければ、ウィルバーは彼女を自分のモノにすることができなくなるということ……?
 空色の瞳をまるくしたまま動かなくなるウィルバーを前に、隣に控えていた宰相ジェイニーが重々しく声をかける。
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