白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
「ウィルバー・スワンレイク。お前は怪盗アプリコット・ムーンを捕まえた際に、褒美として彼女が欲しいと言っておったな。その願い、わしが玉座にいるうちならば叶えてやれないことはないぞ? ただ、愛玩奴隷にするのはいただけない。ほんとうに彼女が欲しいのならば……古代魔術を扱う彼女に“愛”を注げ。花嫁に迎えて、娶れ」
「――はな、よめ?」
まだ、正体もわかっていない女怪盗を、愛玩奴隷としてではなく花嫁にしろと?
けれど王からの提案は、ウィルバーの心をひどく踊らせる。出来心でラーウスの婚礼衣装を着せたあのときから、ほんとうに彼女が自分の妻だったらどんなに幸せだろうと思っていたのだから。
「古代魔術を扱える彼女はきっと、ラーウスの古民族の末裔だ……罪を犯したからといって殺してしまうのは惜しい。孕ませて、ちからある子を産ませたい。ウィルなら、魔法にあてられることもない……良い考えだと思わないかね」
「でも、そんなことをしたら、国民感情は」