白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
捕らえた女怪盗を新国王の戴冠時に恩赦で解放するというシナリオなら理解できるが、その彼女を王弟の息子である憲兵団長が花嫁に迎えるとなると、反発されるのも必至だ。だからウィルバーは愛玩奴隷として彼女を傍に置こうと考えていた。
だというのになぜ、王は自分に怪盗を娶れと、しかも孕ませろなどと、生々しいことを口にするのだろう。夫婦関係に首を突っ込まれるような……夫婦関係?
ウィルバーは支離滅裂になりかけている自分の脳内を宥めつつ、王の言葉に耳を傾ける。
「国民に女怪盗の正体を明かさず解放すればいい……国外追放にしたと言えば問題なかろう。それに、古民族の血統を我がスワンレイク王家に入れることで、ラーウスの他国を牽制することができる。お前がすべきことは、あの女怪盗がどこの一族か自白させ、結婚に持ち込むことだ」
もちろん、フェリックスには内緒にしなくてはいけないがな、とイタズラっぽく笑って。