白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

「父上は怪盗アプリコット・ムーンを火刑にすると……恩赦など生ぬるいことなどできるか、国民の前で見せしめのように殺すのだと……だというのに、おじいいさま? 憲兵団長と結婚させあげく子を為そうとされるとはどういう了見!」
「あーはいはい、ダドリーくん、父親の心のなか透視しちゃったのね。大人ってのは汚いのだよ、心のなかで思っていることと実際に行うことなんてね八割がた別物なの、いちいち食ってかかってたら寝首かかれて人生終わるよ?」
「うぐっ」

 ジェイニーの本音だだ漏れの発言を前にダドリーは息を詰まらせる。透視術を持つ者同士、声に出さなくても理解できてしまう互いの本音が相も変わらず不協和音のように内耳で響く。

「……ジェイニーは、父上が即位したら左遷されるんだよ!? なんでそんな平然な顔してられるの?」
「これ以上息子がよけいな古代魔術に没頭しないように、だっけ……フェリックスさまの魔法嫌いはいまにはじまったことじゃないさ」
「っで、でも」
「まぁまぁ、落ち着けダドリー。ふたりで話していないで、わしにも順を追って説明しておくれ」
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