白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
「簡単な魔法なら、ダドリー、君でも扱えるはずだ。お姉ちゃんは初恋のひとなんだろ? ならばその“情愛”を、この“稀なる石”に込めて」
「え」
「心にそのひとのことを思い浮かべると……」
「――うわぁああ!」
べちゃっ、という音とともに、床の上にさきほどまでいた憲兵団長ウィルバー・スワンレイクの姿が潰れた蛙のような格好で現れた。
呆気にとられた表情のアイカラスと、あーやっぱりと苦虫を噛み潰したような顔のジェイニー、そして困惑しているダドリー。
「ぼ、僕お姉ちゃんのこと思い浮かべたのに……なんで憲兵団長さんが戻ってきちゃったの?」