白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
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不機嫌そうな表情を隠すことなく玉座に現れた甥を見て、ときのスワンレイク王、アイカラス・スワンレイクはふふっ、と鼻で笑う。
昨晩の彼の失態については既に報告を受けている。いまさら本人がのこのこ王の前に言い訳しに来たところで変わるようなものはない。だというのに、ウィルバーはいつも、伯父の前で馬鹿正直に告げるのだ。自分が至らないせいで、王に迷惑をかけていると。
――相変わらず、アプリコット・ムーンにやきもきしているようだの。
アイカラスの海を彷彿させる蒼の瞳がウィルバーを射る。鮮やかな蒼の瞳を持つ王は、とぼけた空色の瞳の甥を前に、あっさり伝える。
「ウィル、根を詰めすぎるのはよくないぞ」
「は……?」