白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
ウィルバーはその言葉にゾクりとする。
そんな不安そうな彼を見て、オリヴィアはからからと笑う。
「大丈夫よ。少しずつなら問題ないから。香油や桃色の媚薬でもダメなら、最終手段につかえばいいわ。素直に自白させたいなら薬で懐柔させちゃいなさいよ」
ちゃぷん、と跳ねた小瓶の中身は澄みきった夕暮れ時のラヴェンダー色をしていた。
ウィルバーはおそるおそる受け取り、二種類の薬と香油の小瓶をくたびれた仕事鞄に仕舞う。
机の上には他にも無色透明な液体が入った瓶や焦げ茶色の丸薬が転がっている。あれはなんだろうとウィルバーが目で訴えると、オリヴィアはあら気づいちゃったの、と笑って小声で教えてくれた。誰かに話したくて仕方なかったとでも言いたそうな勢いで。