白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
おそるおそる尋ねれば、ゴドウィンはそうだねぇとカップを揺らしながら、瞳をぱちぱちと瞬かせる。スワンレイク一族が誇る海の色に近い碧の瞳は、フェリックスとゴドウィンが引き継いでいた。ウィルバーのとぼけた空色の瞳はこんなとき、羨望の眼差しを向ける。
「それほど悲観することはないと思うぞ。たしかにフェリックス兄上は魔法嫌いで、ラーウスの古民族との接触も妻任せのどうしょうもないヤツだ。だからといっていまの国王陛下が決めたことをすぐさま覆すような度胸もない」
「はぁ」
「それに情報源はあのダドリーくんだろ? 彼は透視能力があるから、見せしめに火刑にしたいくらいだ、という兄上の心の声を聞いてしまっただけだと思うのだよ」
魔法の廃れたアルヴスから魔法が残っているラーウスへ渡ったゴドウィンは、フェリックスと異なり、魔法の存在を容認している。自分は見ることも感じることもできないが、信じることならできるぞと言い切って。
それゆえ、スワンレイク王国の第二皇太子である彼を次の王に、と支持する古民族もいるとかいないとか。
「そうですかね」