白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
「媚薬……あぁ、自白用のですか。鞄のなかから凄いニオイが漂ってましたよ……なんであなたまで口にするんです……飲み物にでも混ぜて飲ませればいいでしょうに」
「今度からそうする……」
毎日口移しで媚薬を飲ませていたら、抱き潰してしまうのが目に見えている。現にさっきだって、薬のせいとはいえ、勃起しつづけたウィルバーは何度も怪盗アプリコット・ムーンを屈服させ、二日かけて気絶するまで抱いてしまった。こればっかりは、我慢できなかった自分が悪い。
けど。
――ごめんなさい、ウィルバーさま……
まるで別人のようにしおらしくなって素直に抱かれた彼女の寝言が、あたまのなかから離れない。
抱いたときにも感じた違和感。はじめて抱いた女のはずなのに、気持ちのよい場所をすぐに見つけ出せた自分。まるで俺のことを知っているかのように振る舞い、はぐらかす女怪盗。
ただの男と女になって、心を通わせない性交に溺れればいいと、そんな風に装う彼女が、放っておけない。
「まったく。花の離宮の神殿跡地の魔力にあてられて使い物にならない団員も出てきているんですから、すこしは危機感を持って……」
「あ、ああ……」