白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
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「……っ!」
胸くそ悪い夢というものは、何度も視ているが、実際に在ったかのように体験するのはいつだって心臓に悪い。
ようやく愛するウィルバーが王殺しの罪人として処刑される“不確定な未来”を退けたと思ったら、今度は案の定、自分に返ってきてしまった……ローザベルは布団のなかで似合わない舌打ちをする。
自白を強要すると言いながら口移しで飲まされた媚薬によって身体を高められ、ローザベルの記憶がないウィルバーとひとつになった後に視た“不確定な未来”……魔法封じの枷を外した状態で意識を飛ばしてしまったからか、そのまま“星詠み”のちからを行使することができたらしい。
だが、こんなことで自分がまだノーザンクロスの一族のローザベルでいられることを知ることができてもちっとも嬉しくない。どうせなら幸せになれる“不確定な未来”が視たかった……
だが、花の離宮のウィルバーの寝室で、ローザベルは悪夢という名の“不確定な未来”を視ている。
それは怪盗アプリコット・ムーンが王殺しとなって極刑に処されるという最悪なシナリオだ。