白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 しょんぼりするウィルバーに、なんで憲兵団長が怪盗に謝るんですかと言いたくなったが、さきほどの情事がふたりを素直にさせる。

「けど、こわいくらい……良かったです」

 結婚初夜に塗られた香油と同じ成分の飲むタイプの媚薬。フルーティーで濃厚なお酒のような媚薬を口移しで飲まされて、ローザベルは信じられないくらい淫らに乱れた。
 正常位ですることが当たり前だったのに、ウィルバーにせがまれるがまま、枷を外されてからは後ろ向きで動物のように交わったり、抱き上げられた状態で貫かれたり、さまざまな体位を教えられ、ローザベルは変わってしまった。

 ――俺なしではいられない身体にする。

 その通りだと、身体が疼く。
 もう、すべてを吐き出して楽になりたい。
 けれど、そうしたら、今度はローザベルが王殺しの罪人として、魔女として極刑に処される危機を告げなくてはいけない。
 それに……

 ――わたしが自分の妻だということを伝えたところで、記憶を失っている彼が素直に信じてくれるとは思えない。

「淫乱」
「なっ」
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