白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
これ以上強い薬があるのだと暗に告げる彼を見て、次に飲まされる薬が、さきほど視た“不確定な未来”に関係する鍵なのではないかと不安に苛まれてしまう。
「けど……俺は君に飲んでもらいたくないと思ってる……いくらオリヴィアどのが大丈夫だと言っていても、加減を間違えたら君を、今度こそ失ってしまいそうで……」
――今度こそ?
ローザベルはウィルバーの、空色の瞳に視線を向ける。翠緑色の煌めきが、彼を射る。
「大切な宝物は、もう二度と手放しちゃダメだと……ゴドウィンにいさまが言っていた。きっと、俺はいちど、なんらかの形で君を手にいれていたんだ……だから、俺のことを識っていたんだろう? 鈴なりに咲く薔薇のように可憐な、俺の花嫁さん?」