白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
そこで憲兵団長として怪盗アプリコット・ムーンを追いかけている夫に改めて恋をしたこと。彼になら捕まってもいいやと思った矢先に国王が花の離宮を最後の舞台に整えてくれたこと。
「伯父上もグルだったのか……?」
「いいえ。国王陛下はノーザンクロスの使命を知っていただけ。“稀なる石”でわたしがどんな魔法をつかうかまでは知らなかったの」
だからウィルバーにしつこく取り調べを強要させたのだ。花の離宮で殺さなければ何をしても構わないと、とんでもない命令をして。
はじめから彼は怪盗アプリコット・ムーンがウィルバーの妻であることを知っていたから、怪盗アプリコット・ムーンの処遇をすべて自分に任そうと考えたのだろう。
そうは思わず、愛玩奴隷にしたいなどと褒美に望んだ自分が恥ずかしい……
「そうだったのか」
「わたしも、ここまで事をおおきくするつもりはなかったんです……だけど王妃のティアラを盗んだことで国民感情を煽ってしまって」
「……まぁ、そうだろうな」
「そこで“やりなおしの魔法”がつかえれば良かったのですが、ダメでした。だから」
「花の離宮で、魔法をつかった……」