白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
きっと自分を投げ出してまで“愛”を貫こうとするローザベルに絆されてしまったのだろう。女怪盗に恋するなんて、憲兵団長失格だ。
身体を擦り寄せてきたちいさな怪盗妻の髪を撫でながら、ウィルバーは謝罪する。
魔法のせいとはいえ、愛する妻のことを忘れてしまった自分に腹が立つ。
「いいのです……ウィルバーさまが国王陛下を弑して処刑される未来は回避されましたから」
「そう、なのか」
「はい。ただ……」
ただ、と言葉を濁らせるローザベルに、ウィルバーが首を傾げる。ウィルバーが王を殺して処刑される“不確定な未来”は“やりなおしの魔法”によって確変されたというのに、彼女の表情はすっきりしないままだ。
「今度は、違う“不確定な未来”を視てしまったのです……王を殺して」
――ドンドンドン!!
ローザベルの声を遮るように強くドアをノックされ、ウィルバーが不審そうに立ち上がり、扉を開く。
そこには怒り狂った表情の副団長マイケル・コルブスと花の離宮に駐在していたウィルバーの部下たちの姿。
「何事だ!」