白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
「スワンレイク王国憲兵団長ウィルバー・スワンレイク、ならびに怪盗アプリコット・ムーン。お前たちを王城に連れていく」
「は?」
「国王陛下が毒に倒れた。お前たちふたりが容疑者として上がっている。国王名代フェリックス殿下より花の離宮から連れ出すよう命令が出た。これは決定事項だ」
マイケルの言葉に、ローザベルは唇を青くする。“不確定な未来”が、別方向からふたりを引き裂かんばかりに、迫ってくる。
「おままごとは終わりだ。ローザベル・ノーザンクロス」
――なぜ、貴方が!?
魔法封じの手枷を嵌められたローザベルは、副団長マイケルの言葉に硬直する。
彼は団員たちにウィルバーにも手枷をつけさせる。ふたりの動きを封じた副団長は満足そうに見下し、鼻で嗤う。
「マイケル!? お前……」
「ラーウスの旧いものを一新しなくてはいけません。王家に反逆した魔女よ、捕まってからも憲兵団長を誑かし、国王陛下の暗殺を企むなど……いくら同胞だからといえ、許せることではない」
「誤解よ!」
「弁明は王城にておうかがいしますよ、お姫様。自白剤をたっぷり飲ませてね……」