白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 アイカラスは宮廷魔術師、という役名を宰相というものへ改め、すこしずつ廃れゆく魔法と訣別するための未来を探り出した。この動きは、ノーザンクロスの分家筋でありながらちからを持てずにいたコルブスの一族に希望と焦りをもたらした。これからの時代は、魔法など必要ないのだ、古代魔術にすがるほかの古民族と自分たちコルブスは違う、けれど自分たちから魔法を奪ったら何が残るのだろう、と。

 アイカラスが第一皇太子としたフェリックスもまた、魔法嫌いの王子として知られ、彼が跡を継ぐ頃には、アルヴス同様にラーウスでも魔法が絶滅するのではないかと囁かれるまでになる。おまけに彼は天秤座のリヴラの娘と結婚してしまった。旧きものと新しきものを天秤で公平に扱うというフェリックスの決意に、失望してしまったのは否めない。
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