白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

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   * * *


「……無様ね、ローザベル・ノーザンクロス」
「なんだかこのやりとり、花の離宮でもした気がするわよ? ジェイニー・ジェミナイ」

 マイケルに運ばれてスプレンデンス城の地下牢に放り込まれたローザベルは、憲兵の姿を借りて降りてきた幼馴染を前に呆れたように声を漏らす。
 王城の地下牢は花の離宮の神殿跡地に造られていた監獄とくらべてコンパクトで、檻と檻の間隔も狭い。いまはローザベルだけが檻のなかに入れられているため、声が反響していても気にすることなくふたりは会話をつづけている。

「花の離宮では怪盗アプリコット・ムーンと呼んでいたはずだが?」
「そうね。言っておくけど今回は濡れ衣よ。わたしが国王陛下を弑することなど」
「知っているよ。あと、陛下は死んでない」
「……なんですって?」

 きっぱり告げるジェイニーを前に、ローザベルは甲高い声をあげてしまう。だ、だってマイケルは国王暗殺容疑で自分とウィルバーを王城へ連行するって言っていたのに……?
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