白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
ウィルバーとダドリーと狙われた灰色の白鳥
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国王アイカラス暗殺の罪で花の離宮から怪盗アプリコット・ムーンとともに連行されてしまった憲兵団長ウィルバーは、彼女と引き離された後、王城の憲兵団詰所にて持ち物検査と称した粗探しを受けていた。
「なんだこのくっせえ鞄は! 胡散臭い薬ばっかり入ってら」
ウィルバーの部下だった憲兵に呆れられながら荷物を荒らされた後、オリヴィアから渡された媚薬とともに鞄から出てきた見覚えのない黒い丸薬が入った小瓶が出てきた。
その薬は、服用した人間を内側から蝕み確実に死に至らしめる特別な毒薬、またの名をリヴラの秘薬と呼ばれる貴重なものだった。
リヴラの秘薬、という名称からもわかるように、媚薬をもらいに来たウィルバーがオリヴィアのところから盗んだものではないか、いや、オリヴィアがウィルバーの鞄にこっそり仕込んだんじゃないかとさまざまな憶測が生まれたため、オリヴィアも取り調べを受けることになった。
その結果、皇太子妃オリヴィアはげんざいフェリックスの政務室にて謹慎処分を受けている。
が。
「これは、東の塔でオリヴィア妃が調剤されたものではない。だが、リヴラの秘薬を知る何者かが調剤したものと思われる」