白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
タイタス・スケイルはもともとタイタス・リヴラという名を持つ、リヴラ一族の男で、オリヴィアの弟にあたる。
天秤座のリヴラ、という名から何事にも公平であれ平等であれという指針を持つ家との折り合いがうまくつけられず勘当され、極秘の調剤知識を盗んで国外へ逃げ出したという、一族の汚点的存在だ。
国外逃亡した後、名をラーウスの読み方からアラヴスの言葉で「秤」という意味を持つ「スケイル」へと変え、違法薬物の調剤や密輸販売などさまざまな犯罪に手を染めたことで世界各国からも指名手配される極悪人へと進化を遂げている。
彼ひとりが動かした金額はどこかの国の国家予算に相当し、彼の薬で死亡したり廃人と化した人間の数も計り知れない。
いまはアラヴスの小国に隠れているとされていたが、彼がスワンレイク王国に戻ってきていると知って、ウィルバーは愕然とする。
「そうじゃないとあの薬の出所がわからないもの。それに、お兄ちゃんの鞄を持っていた人間は副団長さんだけなんでしょう?」
「そうだ……」