白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
王城から薬を処方してもらい、花の離宮へ戻ってきた際に、ゴドウィンが来ているとマイケルに言われたウィルバーは、深く考えもせず彼に鞄を預けていた。
鞄に手を加えることができたのは彼しかいない。
「当初の筋書きはそうだったと思うんだ。だけど、ゴドウィン兄ちゃんはそのことに気づいていた。副団長さんがお兄ちゃんの鞄にリヴラの秘薬をいれたのは事実だけど、それはあくまでカモフラージュ」
「カモフラージュ?」
「うん。だって、怪盗アプリコット・ムーンとお兄ちゃんに罪を被せることを提案したのは」
――大切な宝物は二度と手放したらダメだよ。
ウィルバーに残した忠告は、警告だったのだろうか。それとも……
「ゴドウィンお兄ちゃん本人だから」