白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 タイタスのことだ、ゴドウィンの手でアイカラスを殺させ、フェリックスの妻オリヴィアに罪を着せようとでも思ったのだろう、とジェイニーはつまらなそうに呟く。
 けれど、ゴドウィンはその薬をマイケルに渡し、あろうことか異母弟ウィルバーの鞄に入れるよう指示した。どうして、と不安そうに瞳を揺らすローザベルを見て、ジェイニーは微笑む。

「疑惑の魔女がいつまでも花の離宮でふたりの世界に浸られていても困るからね……ゴドウィン殿下はタイタスを捕らえるため、一芝居打ったんだよ」

 次期国王フェリックスが速やかに玉座に座れるよう、不穏分子を排除するため、ゴドウィンを傀儡とし次期国王に推している一族を炙り出した結果、マイケルと対話したジェイニーの透視術によってタイタスの影が暴かれたのだ。
 コルブスの一族がスワンレイク王家を憎んでいたのは知っていたが、まさかゴドウィンを傀儡に自分達が覇権を握ろうとまで画策しているとは考えていなかったよとジェイニーは嗤う。たぶん、タイタスに唆されたのだろう。ノーザンクロスのようになればいいとか言って……
< 240 / 315 >

この作品をシェア

pagetop