白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
ローザベルと怪盗アプリコット・ムーンと最後の恋文
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「ウィルバー・スワンレイク。君の旦那のことだよ」
ジェイニーの言葉に、ローザベルは凍りつく。
「はじめ、彼はリヴラの一族に復讐する気でいた。オリヴィア妃に罪を着せ、フェリックス殿下を失脚させるつもりだったが、ゴドウィン殿下がそれをよしとしなかった。彼の代案が怪盗アプリコット・ムーンともうひとりの落ちこぼれの白鳥、ウィルバーを利用した魔法との訣別だ」
「それで、いまわたしとウィルバーさまは離れ離れになっているわけでしょう?」
「ゴドウィン殿下はフェリックス殿下を失脚させる気はさらさらない。タイタスも気づいたんじゃないかな、彼は使えない、って」
「それでウィルバーさまなの?」
「ああ」
乾いた笑みを浮かべながら、ジェイニーはぶつぶつ呟く。
「リヴラの一族が王のもとにつくことを拒んだタイタスは、最終的に王族と古民族の契約を切ることで復讐を完成させるだろう、そして自身の調剤知識とコルブスから手にいれた“烏羽の懐中時計”の魔力で新たな傀儡の王を生もうとしている」
「契約を切る……訣別じゃなくて?」