白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
「訣別は国民に宣言する意味合いが強いから、ひとりでつかう精霊の魔法が突然消えるようなことはないんだ。契約を切るっていうのは、“愛”をつかう魔法をつかえなくするってこと。いまのフェリックス殿下はオリヴィア妃と結婚した際に古民族の契約をきちんと結んでいるから、訣別の宣言をしたところでその契約を自ら切ることはしないよ。強制終了させた誰かさんと違って」
ジェイニーの言葉に耳を痛くしながら、ローザベルは呟く。
「誰かさんの話はいいから……それで?」
「外つ国にいたタイタスは“やりなおしの魔法”の影響を受けていない。どういうことかわかるだろ」
タイタスはノーザンクロスのローザベルとウィルバーが結婚していることも知っているままだとローザベルに告げ、銀色の瞳をすがめる。
「フェリックス殿下とゴドウィン殿下を操れないと知った彼は、王家の恥さらしと呼ばれる灰色の白鳥を傀儡の王にすることで、ノーザンクロスの姫君が持つ魔法も自分のものにしようと思いついていてもおかしくない」