白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 だが、ゴドウィンはあろうことかその薬を憲兵団長ウィルバー・スワンレイクの鞄に潜ませ、自分が潜入時に隠れ蓑につかっていた怪盗アプリコット・ムーンとともに実行犯として王城へ連行してしまった。なぜかと問いただせば、涼しい顔でゴドウィンは応えたのだ、疑いの目がこちらに向く前に、実行犯を仕立ててやったのだ、と。

 何かがおかしいと感じたタイタスは、ゴドウィンとフェリックスが通じていたことに気づいてしまった。いくらタイタスがコルブスの一族とゴドウィンを玉座に押し上げようとしても彼はフェリックスという兄がいる限り戴冠する気がさらさらないのだ。
 このままではフェリックスが新たな王となり、リヴラの一族が何食わぬ顔で国の中枢に入り込んでしまう。

 そこでタイタスは思い出す。
 いるではないか、スワンレイク王国にはもうひとりの白鳥が。落ちこぼれで灰色で、ノーザンクロスの古臭い魔女の娘と結婚させられたあの、無能な憲兵団長が。
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