白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 ただ、ダドリーからは日が変わっても戻ってこないようなら召喚の魔法をつかうからねときっぱり告げられてしまった。いつの間に彼は“稀なる石”と“愛”を媒介した魔法をつかえるようになったのだろう。王城のちいさな魔術師としてジェイニーから戦力認定されていたダドリーを見て、ローザベルは義兄の息子の成長に驚くばかり。
 そういえば、ダドリーの首には皮ひもで結ばれた大人サイズの指輪が光っていた。あれも“稀なる石”なのだろう。自分の瞳の色にそっくりな翡翠色の指輪を大切そうに手の中に包み込んで、ダドリーは「いってらっしゃい」と怪盗アプリコット・ムーンの出陣を見送ってくれた。

「ジェイニー、憲兵団は動くと思う?」
「マイケルがあの状態じゃあいまの憲兵団には期待できないんじゃない?」

 ――マイケルはタイタスに利用されているだけだ。“烏羽の懐中時計”を取り戻し、魔法をつかったら彼に返してあげればいい。それまでは余計なことをしないよう我が妃が動けない状態にしてやろう。

 国王名代のフェリックスの言葉を思い出し、ジェイニーはぶるりと身体を震わせる。
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