白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
その横で、ダドリーがゴドウィンに噛みついている。
「ローザベルお姉ちゃんを危険な目にあわせるなんて、ゴドウィンお兄ちゃん嫌い!」
「まあまあそう言うなって我が甥っ子よ。結果的に悪党タイタスは君の可愛い弟になり、ウィルバーは愛する妻を取り戻せたのだから」
ライナスと名づけられた赤ん坊を、ダドリーはオリヴィアと一緒になって可愛がっている。彼いわく、無垢な赤ん坊は透視術で心のなかを見ても、清らかなのだという。王城に暮らし、他人と駆け引きする日々を送るダドリーにとって、ライナスは安らぎを与えてくれる存在となったのだ。ゴドウィンは彼が自我を持ち始めたら透視術にどう影響してくるのか観察したいといまから研究熱心だ。
その一方、懸念されるのは薬に倒れた怪盗アプリコット・ムーン……ローザベルのことだ。
「眠り姫状態のお姉ちゃんを取り戻したって……しかも起こすためには憲兵団長さんがいかがわしいことしなくちゃいけないんでしょ!? さっそく花の離宮にふたり連れ戻されちゃったけど……怪盗さんとして捕まったときみたいに恥ずかしいこといっぱいされちゃうの? ねぇ?」