白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 九歳の男児には刺激の強すぎる話題だが、彼は真剣である。なんせローザベルに初恋を捧げたいまの彼は“情愛”を媒介に“稀なる石”をつかった魔法を扱えるまでに急成長してしまったのだから。将来が楽しみだとジェイニーはほくそ笑む。
 
「いいんじゃない? あのふたりはもともと夫婦なんだから。ただ、“やりなおしの魔法”のせいでいまのふたりは夫婦というより結婚前の恋人同士に思われてるかな」
「恋人?」
「そ。ダドリーくんにはまだ早いよ」
「早くないもん!」

 ぷりぷり頬を膨らませて反論するダドリーを見て、そういうところが子どもなんだよと心の中でゴドウィンが呟けば「聞こえています!」と即座に言い返される。ふたりのやりとりを横目に、ジェイニーはふう、とため息をつく。

 ノーザンクロスの家から王宛に連絡が来たのは今朝のことだ。
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